皮膚のトラブルには「スキンケア」を施す必要があります。その「スキンケア」の有効な治療方法の一つに「シャンプー療法」があります。
利点は、自宅でもできること、副作用がほとんどないこと、古い角質の除去などこの治療以外は不可能など多くの点が挙げられます。
しかし欠点もあり、シャンプーが嫌いや全身状態が悪い動物には不可、方法を間違えると悪化する可能性があるなど、がありますが、「シャンプー療法」はほとんどの皮膚疾患に有効なため非常に重要な治療方法です。
ここでは、一般的な皮膚疾患とそれぞれに使用するシャンプーを紹介します。

アトピー性皮膚炎

アトピーの犬のおなか

アトピー性皮膚炎は遺伝的な背景を原因とした慢性的なかゆみを伴う皮膚疾患です。
遺伝的に皮膚バリアの機能が弱く、生活環境にアレルギーを持っていることなどがきっかけとなって発症することが多いとされています。

 

使用するシャンプー

コロイド・オートミールシャンプーや痒みを緩和し炎症を軽減するシャンプーを使用します。オートミール、アロエベラなど
また、乾燥を防ぐためにシャンプー後は保湿剤を使用します。

 

アレルギー性皮膚炎

食物アレルギーの犬の顔貌

アレルギーとは、体を守る免疫が特定の物質に過剰に反応している状態のことです。
アレルギーによって、皮膚に炎症やかゆみが引き起こされた状態を、アレルギー性皮膚炎といいます。
「食物に含まれるもの」と「環境中にあるもの」がアレルゲン(抗原)となり引き起こされます。アレルギー性皮膚炎は生涯付き合っていかなければならない病気です。

 

使用するシャンプー

アトピー性皮膚炎のシャンプーに準じますが、アレルゲンを洗い流すために低刺激シャンプーと止痒性シャンプーを組み合わせて使用します。

 

外部寄生虫

毛包虫に感染した犬の前足

犬にはノミをはじめとして、シラミやダニなどさまざまな外部寄生虫が寄生する。
これらが犬の体表に寄生すると、多くの場合非常に強い痒みが生じ、犬はしきり
に体をかいたりかんだりするようになる。
ノミ・シラミ・皮膚穿孔ヒゼンダニ(疥癬)・耳穿孔ヒゼンダニ(耳ダニ)・毛包虫(アカラス)

 

使用するシャンプー

寄生虫を駆虫薬でなどで駆虫後、虫体や排泄物を洗い流すために低刺激シャンプーや止痒性シャンプーを使用する。
毛包虫症には、ダニを駆除する薬液をシャンプー後に浸潤させる

 

膿皮症

細菌感染による皮膚の化膿性病変を膿皮症といいます。皮膚のバリア機構の破壊や免疫力の低下などが引き金となり動物の皮膚で細菌が繁殖して、症状が発症します。

 

使用するシャンプー

抗菌作用のあるクロルヘキシジンは皮膚刺激が少なく持続的な抗菌作用が期待できます。
有効成分:グルコン酸クロルヘキシジン、硝酸ミコナゾール、ヒノキチオールなど
シャンプー名:ノルバサンシャンプー、クロルヘキシジンシャンプー、マラセブ、マラセキュア

 

脂漏症

脂漏症とは、名前があらわすように「皮脂が漏れるほど多く分泌されてしまう皮膚病」のこと。
何らかの理由で皮脂成分のバランスが悪くなることで発症し、フケや痒みなどの症状が表れます。症状によって「脂性脂漏症」と「乾性脂漏症」の2種類に分類されています。

使用するシャンプー

(脂性脂漏症)

ワックス状になったフケが皮膚にべっとりついている状態を改善したり皮膚のべとつきを伴う感染症には、クレンジングや脱脂作用のあるシャンプーを使用します。
有効成分:サルチル酸、乳酸エチル、過酸化ベンゾイル、二硫化セレン、過酸化ベンゾイルなど

 

(乾性脂漏症)

フケが非常に多く付着して、皮膚表面にうろこ状の角質剥離が観察されます。
スキンケアは、クレンジング後、痒み止めシャンプーや抗菌シャンプーを使用する。
そのあと必ず皮膚の水分の保持のために保湿剤を使用する。
保湿剤:有効成分:セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、リピジュアなど

 

マラセチア性皮膚炎

マラセチアに感染した犬の前足

マラセチア皮膚炎は、皮膚に存在するマラセチアという酵母菌の一種が、何らかの理由で増えすぎて皮膚の炎症を引き起こす皮膚の病気です。マラセチア菌はカビの仲間なので、一度感染すると治りにくく、再発しやすい特性があります。

 

使用するシャンプー

マラセチア菌に対して抗真菌剤の硝酸ミコナゾールが効果があります。硝酸ミコナゾールが含まれる「マラセブ」「マラセキュア」や「メディダーム」を使用します。

 

内分泌性疾患

甲状腺機能低下症による全身脱毛

甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング)アロペシアX:副腎性ホルモン分泌異常が代表的な内分泌疾患(ホルモン異常)です。

 

使用するシャンプー

それぞれの疾患によって代謝異常や血圧異常を伴うため状態の悪いときはシャンプーは禁忌だが、膿皮症や脂漏症を併発することが多いためその症状に準じてスキンケアを行う。

 

シャンプー療法

皮膚のトラブルは、現代病といえるほど多くの動物たちが罹り悩まされています。
一年を通して変化のない環境やフード、そして純血種が持つ免疫力の弱さなどが複雑に関与しています。
また皮膚のトラブル内容も多様化しており、アトピー、アレルギーを代表して膿皮症、脂漏症、免疫疾患、内分泌疾患、寄生虫等が複雑に絡み合い治療を困難なものにしております。
その皮膚のトラブルに有効な治療方法の一つに「シャンプー療法」があります。
利点は、自宅でもできること、副作用がほとんどないこと、古い角質の除去などこの治療以外は不可能など多くの点が挙げられます。
しかし欠点もあり、シャンプーが嫌い、全身状態が悪い、原因治療ではないなど、がありますが、「シャンプー療法」はほとんどの皮膚疾患に有効なため非常に重要な治療方法です。

① 保湿

乾燥した皮膚やデリケートな皮膚の水分の保持と潤いを与えます。

有効成分:セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、リピジュアなど

効果のある疾患:アレルギー性皮膚疾患

② 止痒

痒みを緩和し炎症を軽減します。

有効成分:オートミール、アロエベラなど

効果のある疾患:アトピー性皮膚疾患、表在性膿皮症

③ 抗脂漏、角質溶解

脂漏症に対し脱脂作用や角質溶解、皮膚の軟化作用等の効果があります。

有効成分:サルチル酸、乳酸エチル、過酸化ベンゾイル

効果のある疾患:脂漏性皮膚炎、脂腺炎

④ 抗菌

表在性膿皮症やマラセチア性皮膚炎などの常在菌が原因の場合殺菌および静菌作用が期待できます。

有効成分:グルコン酸クロルヘキシジン、硝酸ミコナゾール、ヒノキオールなど

効果のある疾患:表在性膿皮症、マラセチア性皮膚疾患